普通角閃石 hornblende 戻る
(Na,K)0〜1(Ca,Na)2(Mg,Fe,Al)5[(Al1〜2,Si6〜7)8O22](OH,F)2

単斜晶系 二軸性で光軸角はさまざまで,固溶体組成により光学的正負の両方ある。 α=1.61〜1.71 β=1.62〜1.73 γ=1.63〜1.73(屈折率は鉄に富む濃色のものほど高い) γ-α=0.02前後〜0.03前後

形態/自形〜半自形のものは柱状。

色・多色性/Z´の色として青緑色系・緑色系・褐色系のものがあり,これらの中間色のものも多い。黒雲母同様,Fe2+に対しFe3+に富むものは緑〜青緑色が強い。なお,著量のTiを含むものは赤みの強い濃褐色で,濃淡の多色性が著しい。色調にかかわらず,X´=淡色,Z´=濃色。
へき開/2方向(C軸方向)に完全。C軸方向からはほぼ120°に交わる格子状に見える。C軸に直角の方向からは1方向しかないように見え,一見,黒雲母と紛らわしいこともある(なお,黒雲母は常に直消光で,干渉色は3〜4次に達する)。
伸長/

消光角/C軸に直角の方向から見た,1方向しかないように見えるへき開線に対し,最大20〜25°程度(b軸方向から見た場合)。


双晶/(1 0 0)の双晶はしばしば見られ,多色性・消光状態のいずれでもわかる。2回以上反復していることもある。この(1 0 0)の双晶境界ではへき開線は屈曲することなく連続する。

累帯構造/時にNa・Kの量,Ca⇔Na,Mg⇔Fe,Al・Al⇔(Fe,Mg)・Siなどのさまざまな置換による累帯構造があり,これにより,多色性の色や干渉色に違いが現れることがある。

産状

・各種火成岩に含まれるが,どちらかというと火山岩よりも深成岩に多く出現する(輝石穎はその逆。これはマグマ中の水分量が深成岩ができる地下深部の方が多いため)。そして,火山岩中のものは褐色種が多く,急激に結晶周囲が空気の酸素で酸化されて磁鉄鉱や赤鉄鉱などの黒色不透明の微粒集合体に変質していることが多い(オパサイト)。なお,玄武岩に出現することはまれで,玄武岩中の角閃石はTiに富む濃赤褐〜黄褐色の多色性を示すケルスト閃石の場合が多い。

・変成岩では,300〜400℃程度の低温の変成岩には出現しないが(その場合はアクチノ閃石が多い),中温〜高温の変成岩にはよく見られ,角閃石片岩や片麻岩などに多く,そのうち中温の変成岩にはFe3+の多い青緑色種が出現し,変成温度が高温になると緑色種を経てFe2+の多い褐色種が出現するようになる。



自形の普通角閃石の斑晶をC軸方向から見たもの (平行ニコル)
Hb:普通角閃石
安山岩中の斑晶で,大きなものは自形の斑晶をC軸方向から見たもので,菱型に近い6角形で,その中に互いに約120°(補角約60°)に交わる細いシャープなへき開線が多く見える(なお,この斑晶は平行ニコルで色の異なる累帯構造をなしている)。なお,C軸方向からずれた方向の粒子ではへき開線の交わりは120°から大きくずれる。
なお,火山岩では普通角閃石は,地表付近で高温状態で結晶周囲が酸化され,黒い不透明な磁鉄鉱や赤鉄鉱の微粒集合体に置き換わっている場合があり(オパサイト化),この画像のものも結晶周囲がややオパサイト化し,黒色不透明なリムができている。



累帯構造がある普通角閃石
Hb:普通角閃石,Pl:斜長石

安山岩中のもの。普通角閃石は平行ニコルで色の異なる累帯構造をなす場合がある。干渉色については画像のものは累帯構造ではあまり違いがない。なお,左下のものは(1 0 0)の双晶をなし,クロスニコルでの消光状態で双晶境界がわかる。その双晶境界ではへき開線は連続し,屈曲することはない。



C軸方向から見た(1 0 0)の双晶をなす普通角閃石
Hb:普通角閃石,Pl:斜長石

安山岩中のもの。中央がC軸方向から見た(1 0 0)の双晶をなす普通角閃石。平行ニコル(色の違い)・クロスニコル(消光状態)のいずれでも,菱型に近い6角形の長手方向に双晶境界があるのがわかる。なお,へき開線は,双晶境界では連続し,屈曲することはない。




花こう岩中の普通角閃石
Hb:普通角閃石,Bt:黒雲母,Pl:斜長石,Af:アルカリ長石
深成岩中の普通角閃石は褐緑〜緑褐色のものが多い。平行ニコルでは黒雲母よりもやや緑色がかり,屈折率がやや高いのでへき開線や輪郭がやや明瞭に見える。クロスニコルでは黒雲母より干渉色が低く,10〜20°程度の斜消光を示す(黒雲母は直消光)。


結晶片岩(角閃石片岩)中の普通角閃石(ほぼ全体の色のある部分)(平行ニコル)
Zo:灰れん石(無色),Rt:ルチル(暗褐色)

結晶片岩中のものは火成岩のものよりやや低温(500℃前後)ででき,このようなFe3+に富む青緑〜緑色種の普通角閃石が多い。高温の変成作用では褐色を帯びたものも出現するようになる。
なお,300〜400℃程度の低温の変成岩(緑色片岩)では普通角閃石ではなくアクチノ閃石が見られ,それは細かい繊維状〜細針状。




角閃石片岩

これはおおむね黒い普通角閃石からなる角閃石片岩。やや緑色がかって見えることが多い。
片麻岩中の普通角閃石 (平行ニコル)
Hb:普通角閃石,Bt:黒雲母,Pl+Qz:斜長石+石英
600〜700℃程度の高温の変成作用を受けた片麻岩には褐色種の普通角閃石が見られ,緑色部と累帯構造をなす場合もある。上画像のものは,結晶中心付近はFe2+に富む褐色種で,その周りはFe3+に富む緑色種で,高温の変成作用の後に温度低下で緑色種が累帯状に生成したものである。なお,共生する黒雲母は褐色種。




普通角閃石を含む片麻岩
肉眼で黒い部分が普通角閃石と黒雲母からなる部分。花こう岩中の普通角閃石のように自形になることはほとんどない。